院長挨拶このページを印刷する - 院長挨拶

 地域偏在の解消・医療の健全性を目指して
 

院長 岡﨑 貴裕

 
  一足早い河津桜の後にソメイヨシノが咲き誇る陽春を迎え、今年も新しい年度が始まろうとしているなか、皆様方におかれましては益々ご清栄のことと存じます。
 
昨年度はCOVID-19のパンデミックで隠されていた急性期医療の問題点が一気に噴出した年でもありました。

 ① 地方・地域での医師不足(医師の少なさゆえに地域の救急医療体制が十分に組めない。必要な科の医師がそろわない。)、さらには医療従事者の減少。
 ② 高齢者救急の増加(保険診療点数は公定価格であり、高齢者救急の数の上昇ほど収益が上がらない。)
 ③ 物価上昇による人件費・材料費・光熱費の上昇(保険診療は公定価格であり、且つ物価スライド制ではないため利益が押し下げられる。)

これらの要因により、多くの公的・公立の急性期病院は赤字に喘いでいます。当院も例外ではありません。上記のすべてにおいて当院だけの努力で解決できるものはありません。しかしながら、①の是正へ向けて努力する姿勢を発信することは可能ではないかと考えられます。
 
 静岡県においては、昨年度半ばに新しい知事が県民から選ばれ、そのもとで新しい医療政策が始まろうとしています。静岡県は、2025年度の県の予算審議において、県東部の医師解消に向け、県内の医師養成機関などと協力して指導医や若手医師の派遣体制整備を行なっていくことを開示しました(静岡新聞 1月24日付)。本県は、総人口は約350万人で全国10位の人口多数県であるにもかかわらず、10万人あたりの医師数が全国39位の医師少数県です。それに加えて東部地域は、西部、中部に比してさらに医師が少ない状況にあります。静岡県は、医師を増加・定着させるために「医学修学研修資金制度」(修学資金の貸与とともに県内の病院に一定期間就労する義務を負う。)を利用し、県内での医師増加を図っている中で東部地域への医師派遣が少し取り残されている現状があります。一方、若い医師のみが地域に派遣されても、それを指導する医師がいないと医師としての成長には自ずと限界が出てきます。よって、指導医が少ない地域には若手医師も来ないという悪循環が東部地域に医師が増えない一つの要因になっています。
 当院も病院の規模に比べると圧倒的な医師不足の状況にあります。静岡県とは医学修学研修資金制度を利用している若手医師の派遣について、浜松医大をはじめとする医師養成機関とは、その若手医師を指導する指導医の派遣について議論を重ね、当院および当地域での医師増加(県全体から見るとアンバランスの解消)につなげていく所存です。
また、このような静岡県全体の流れに沿うべく、当院は2025年4月1日より地域医療連携推進法人ふじのくに社会健康医療連合(公立大学法人静岡社会健康医学大学院大学、県立総合病院機構、JCHO清水さくら病院)の一員に参加させていただくことになりました。この医療圏を超えた医療連携法人においても、人事交流などを積極的に推進しながら、最終的には静岡県内における医師及び医療の偏在の解消を目指していく所存です。一朝一夕にできるとは考えていませんが、当地域において綻びかけている救急医療や東部地域の十分な医療体制の再構築に向け努力を重ねていきたいと考えています。
 

2025年4月1日

院長 岡﨑貴裕