・適切な意思決定支援に関する方針・身体拘束最小化のための指針
適切な意思決定支援に関する方針
静岡医療センターにおける意思決定支援に関する指針
1. 基本方針
患者および家族等は、疾患を抱えて治療や療養生活を送るにあたり、さまざまな意思決定の機会に遭遇する。医師をはじめとする院内倫理チームは、患者の意思を尊重した意思決定を支えることを目標とし、患者や家族等の意見を繰り返し聞きながら、適切な説明と話し合いを行い、医療とケアを進めるものとする。また、人生の最終段階を迎える患者および家族等においては、患者の尊厳を追求し、自分らしく最期まで生き抜き、より良い最期を迎えられるよう人生の最終段階における最善の医療とケアを作り上げるものとする。それらに関する適切な意思決定支援のプロセスを示すために、本指針を策定する。
※「人生の最終段階」の定義
・がんの末期のように、予後が数日から長くとも2~3ヶ月と予測が出来る場合
・慢性疾患の急性増悪を繰り返し予後不良に陥る場合
・脳血管疾患の後遺症や老衰など数ヶ月から数年にかけ死を迎える場合
なお、どのような状態が人生の最終段階かは、個々の患者の状態を踏まえ、多職種にて構成
される各部署のカンファレンス等で判断するものとする
される各部署のカンファレンス等で判断するものとする
・病状が進行し死が避けられない状態の場合に心肺蘇生を行わないDNAR
※言葉の定義
BSC(ベストサポーティブケア)・・・がんに対する積極的治療を行わずに症状緩和の治療
のみを行うこと
のみを行うこと
緩和ケア・・・患者さんの痛みや苦しみを和らげることを優先する医療
DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)・・・心停止時に、CPRを実施しないこと
CPR(cardiopulmonary resuscitation)・・・心肺蘇生法
心肺蘇生・・・心臓マッサージ、除細動、気道確保、人工呼吸を行うこと
2. 医療・ケアの方針に関する決定の手続き・具体的な意思決定のあり方
1)医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて医療・ケアを受ける本人は各部署で十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本としたうえで、医療・ケアを進める。
2)本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援をプライマリーナースが行い、本人との話し合いを繰り返し行う。
3)本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族などの信頼できるものも含めて、本人との話し合いを繰り返し行う。また、この話し合いに先立ち、本人は特定の家族等を自らの意思を推定する者として前もって定めておくことが望ましい。
4)人生の最終段階における医療・ケア行為の開始・不開始、医療・ケア内容の変更、医療・ケア行為の中止等は、各部署で多職種により医学的妥当性と適切性、患者QOLの視点から慎重に判断する。
5)プライマリーナースは、可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、本人・家族等の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療・ケアを行う。
6)生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は,本指針の対象としない。
3. 医療・ケアの方針に関する決定の手続き・具体的な意思決定支援の進め方
1)本人の意思が確認出来る場合
①方針の決定は、本人の状態に応じた専門的な医学的検討を経て、医師等の医療従事者から適切な情報提供と説明を行う。その上で、本人と各部署プライマリーナース中心に合意形成に向けた十分な話し合いを踏まえた本人による意思決定を基本とし、家族(もしくは主たる介護者)も関与しながら、厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスにおけるガイドライン」を参考に医療・ケアの方針を決定する。決定内容は診療録に分かりやすく記録する。
②時間の経過、心身の状態変化、医学的評価の変更、患者や家族を取り巻く環境の変化等により、意思は変化することがあるため、各部署では、師長が患者自らの意思をその都度示し、伝えることが出来るように支援する。患者が自らの意思を伝える事が出来なくなる可能性もあるため、その時の対応についても予め家族等を含めて話し合いを行う。
③このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度診療録に記録し、部署内で共有する。
2)本人の意思が確認出来ない場合
①家族等が本人の意思を推定出来る場合には、その推定意思を尊重し、患者にとっての最善である医療・ケアの方針を各部署で師長、プライマリーナースと共に慎重に検討し、決定する。
②家族等が本人の意思を推定出来ない場合、また家族等が判断を病院に委ねる場合は、本人にとって何が最善であるかについて、家族等と各部署師長が中心に十分に話し合い、決定する。
③家族等がいない場合は、患者にとって最善と思われる医療・ケアの方針を各部署で多職種が慎重に検討し、決定する。
④これらの決定が困難な場合、各部署師長の申し入れにより、必要と判断される場合は静岡医療センター臨床倫理委員会で、その方針を審議する。
3)認知症等で自らが意思決定をすることが困難な患者の意思決定支援障害者や認知症等で、自らが意思決定をすることが困難な場合は、厚生労働省の作成した「認知症の人の日常生活・社会生活のおける意思決定ガイドライン」を参考に、出来る限り本人の意思を尊重し反映した意思決定を、家族及び関係者、プライマリーナースやソーシャルワーカー等多職種が関与し慎重に検討、支援する。
4)身寄りが無い患者の意思決定支援
身寄りが無い患者における医療・ケアの方針についての決定プロセスは、本人の判断能力の程度や入院費用等の資力の有無、信頼できる関係者の有無等により状況が異なるため、介護・福祉サービスや行政の関わり等を利用して、本人の意思を尊重しつつ厚生労働省の「身寄りがない人の入院及び医療に係る、意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」を参考に、その決定を支援する。
4. DNARについて
1)DNARの基本的な考え方
①患者、家族等に病状と予後の説明を行い十分話し合ったうえで方針を決定する
②患者、家族等の意思は時間経過や心身の状態の変化を伴い変化しうるものであるためその変化に随時、真摯に対応する
③DNAR指示のもとに心肺蘇生以外の酸素投与、輸液、輸血、ICU入室など通常の医療、看護行為の不開始、差し引かえ、中止を自動的に行ってはいけない
*終末期医療における医療、看護行為の不開始とは別とする
2)DNARの心肺蘇生について
心肺停止した場合、当院では原則として心肺蘇生法を実施する。しかし、DNAR患者意向表明書がある場合にはそれに従うが、CPR以外も実施しないという意味ではない。予期せぬ心肺停止(例えば窒息など)には、蘇生の可能性がある場合はCPRを開始する
3)DNAR指示について
(1)判断確認基準
ア.適切な治療にもかかわらず、病状の進行により死が差し迫った状態で、心肺停止が起こった場合、仮に心肺蘇生しても短期間で死を迎えると推測される。または1か月以内に死亡する可能性が高いと考えられる場合。
イ.原則2名以上複数医師で判断。(初期研修医を除く)ただし夜間、休日など手薄な状況の場合は医師1名での判断も可能とする
(2)医師の役割
ア.現在の病状や推測される予後について十分な説明を行う。
イ.DNAR指示取り消しについての説明
ウ.電子カルテの診療録とともに重要情報に記載する
(3)看護師の役割
ア.患者、家族の立場に立って心理的サポートを行う。インフォームドコンセントの際の患者、家族の様子や反応、どこまで理解できているか、患者・家族の意思を必ず電子カルテへ記載する
(4)患者の意向確認
ア.患者の意思決定ができる状態の場合
医師は、患者と家族等へ説明をする。この際、主治医と看護師が同席し説明。
イ.患者の意思決定ができない状態の場合
医師は、家族等へ説明する。この際、主治医と看護師同席にて説明。
(5)予期せぬ心肺停止となった場合
窒息、転倒に関連した心肺停止など、現病に伴う心肺停止以外で蘇生の可能性がある場合は心肺蘇生を開始する
(6)DNAR指示の妥当性の確認
主治医及び病棟師長・病棟看護師は指示が出された日から定期的に指示の妥当性を検討する
必要がある。可能な限り倫理カンファレンスにて病状、患者・家族の意思に変化がないかどうか必要な治療ケアに差し控えがないかを検討する。
必要がある。可能な限り倫理カンファレンスにて病状、患者・家族の意思に変化がないかどうか必要な治療ケアに差し控えがないかを検討する。
(7)DNAR指示の取り消し
上記⑹での検討の結果、取り消しとなった場合はその理由を診療録に記載し、電子カルテ上の重要情報の記載を取り消す。
(8)DNAR指示の安全性、倫理確保のための各職員の役割
ア.職員の役割
当原則をしっかり熟知した上で運用しなくてはならない。DNAR指示の妥当性にそぐわない 不適切な指示が出ている場合は主治医・病棟師長に報告する。
イ.当該病棟師長の役割
・当該患者が入院している病棟の師長はDNAR指示が出された患者を把握し、定期的に病棟内で妥当性の確認をカンファレンス等で行う。
・不適切な事例に対して、指導など必要な介入を行う。
5.支援体制
(1)部署内の倫理カンファレンス
構成員:医師、研修医、看護師(看護学生含む)、療育指導室、保育士、MSWなど、部署内関係者が終末期の状態であるのか、本人が意思を示せる状態なのか判断し、人生の最終段階における医療について話し合いを行う。患者と関わりのある職種、職員の参加を促す。
(2)院内の多職種カンファレンス
「患者カンファレンス」「ACPカンファレンス」「診療科別カンファレンス」「退院支援カンファレンス」などの活用部署からの相談を受け、人生の最終段階の医療の内容等について、倫理的課題の整理と助言を行う。
(3)院内、必要に応じて第三者外部委員を交えた「臨床倫理委員会」
(1)(2)、院内委員による合意形成が困難な場合は、第三者委員に拡大して検討する。
6. 支援の記録
診療録に主治医が患者・家族等に終末期の状態であることを説明し、意思確認をした際には、以下の内容について診療録に記録する。また、説明時に同席した看護師等も同様に診療録にその内容を記載する。
(1)医学的観点から医学的終末期であること、家族等に説明した内容、説明を受けた者の理解・状況
(2)意思確認の観点から患者・本人の意思、事前指示書の有無(もしも手帳を含む)、代理意思決定者による推定意思、医療・ケアチームメンバー名
(3)延命処置の観点から選択肢の可能性とそれらの意義、患者にとって最善の治療方針についての検討事項、検討メンバー名
(4)状況変化への対応
状況の変化や対応の変更、治療経過と結果
7.患者の意思を確認する書類
人生会議手帳、エンディングノートをもとに意向の確認、意思確認書、DNAR意向証明書、DNAR指示書など
令和 7 年 5 月作成
参考文献
①長谷川 剛 (2022.2・3月号) 「DNRまたはDNARについて」 病院安全教育
②日本看護協会 「看護職の倫理綱領」
③山縣 然太郎 「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関する
ガイドライン」に基づく事例集
④日本倫理医学会 「日本版POLST(DNAR指示を含む)作成指針」
⑤厚生労働省(2018年) 「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラ
イン」
イン」
⑥日本集中治療医学会評議員施設および会員医師の蘇生不要指示に関する現状・意識調査
集中医誌2017.24.227-43
⑦京都民医連中央病院 (2017.2月改定版) 倫理委員会「DNARに関するガイドライン」
⑧認知症の人の日常生活・社会生活のおける意思決定ガイドライン(厚生労働省2018年6月)
⑨ACP 推進に関する提言(日本老年医学会2019年)
身体拘束最小化のための指針
静岡医療センターにおける身体的拘束を最小化するための指針
1.身体行動制限(拘束・抑制)に関する基準
患者の身体行動制限(拘束・抑制)は患者の安全を確保する目的で、やむを得ない場合にのみ実施する。身体的拘束は人権を侵害する行為であるため、実施する際は、その必要性を慎重に判断し、患者・家族に説明する。また、その制限は患者の症状に応じて、効果的な方法で,必要最小限度(最も制限の少ない方法,短い期間)になるようにする。
1)身体行動制限(拘束・抑制)の定義
身体行動制限(拘束・抑制)とは、「衣類又は綿入り帯等を使用して、一時的に患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限」をいう。しかし,時間の経過と共に抑制具の開発もあり、当院において身体行動制限とは、「医療的な配慮がなされた拘束用具によ り,体幹や四肢の一部,あるいは全部を種々の程度に拘束する行動の制限」とする。また患者の身体行動制限とは「拘束」及び「抑制」を指す。
*厚生労働省が示す身体拘束の定義厚生省告示第129号「身体拘束の定義」)患者の身体行動制限(拘束・抑制)は患者の安全を確保する目的で、やむを得ない場合にのみ実施する。身体的拘束は人権を侵害する行為であるため、実施する際は、その必要性を慎重に判断し、患者・家族に説明する。また、その制限は患者の症状に応じて、効果的な方法で,必要最小限度(最も制限の少ない方法,短い期間)になるようにする。
1)身体行動制限(拘束・抑制)の定義
身体行動制限(拘束・抑制)とは、「衣類又は綿入り帯等を使用して、一時的に患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限」をいう。しかし,時間の経過と共に抑制具の開発もあり、当院において身体行動制限とは、「医療的な配慮がなされた拘束用具によ り,体幹や四肢の一部,あるいは全部を種々の程度に拘束する行動の制限」とする。また患者の身体行動制限とは「拘束」及び「抑制」を指す。
(1)徘徊しないように、車椅子、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る
(2)転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る
(3)自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む
(4)点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る
(5)点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型手袋等をつける
(6)車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないようにY字型抑制帯や腰ベルトをつける
(7)立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する
(8)脱衣やおむつ外しを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる
(9)他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る
(10)行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる
(11)自分の意志で開けることのできない居室等に隔離する
2)身体的拘束の適応要件
(1)身体的拘束を行う場合は以下の3要件をすべて満たしていること
①切迫性 :患者本人又は他の患者の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと
②非代替性:身体的拘束以外に代替する方法がないこと
③一時性 :身体的拘束が一時的なものであること
(2)切迫性要件の具体例
患者の切迫状態をカルテに記録する。
①意識障害,興奮状態がある,あるいは発達段階により身体の危険を予知できない場合
a.意識障害,興奮状態のため患者が生命に関わるラインやチューブ類の自己抜去
・循環に関わるもの:心臓補助循環チューブ,動脈ライン,CV ライン,透析・血液浄化ライン
・呼吸に関わるもの:気道確保チューブ,人工呼吸器,酸素マスク
・手術等の操作が必要で再挿入困難:脳室ドレーン,胸腔・腹腔・消化管ドレーンなど
b.認知能力の低下,あるいは発達段階により状況を理解できない。
・a.の行動をとる、あるいはラインやチューブ類に関係なく行動する。
・自分の置かれている状況を判断できず、ベッドから転落や転倒する危険性がある
②自傷,自殺行為や他人に危害や迷惑を与える可能性が高い場合。
③治療上必要な体位や安静が保持できない場合。
④皮膚掻痒,病的反射などがあり、患者本人の意思で体動を抑えることができない場合
⑤その他,診療に支障を来す場合。
(3)非代替性要件の具体例
身体的拘束回避に向けた代替方法を試みて、効果が得られない事をカルテに記録する
①チューブ類の固定方法、挿入部位の変更を試みる(手が届かない部位や位置)
②チューブ類が見えないように位置や衣類で工夫する。
③病衣を工夫する。(病衣をパジャマに,手が入らないようテープで病衣の合わせを固定する)
④見守りを十分に行う。(部屋をスタッフステーションの近くに移動,勤務者の協力)
⑤身体的拘束を直接行う以外の間接的監視を行う。(センサー類の活用)
⑥家族に協力を依頼し、ベッドサイドでの見守りを家族と共に試みる。
(4)一時性要件の具体例
①身体の拘束の必要性を毎日評価し、行動制限が必要とされる最も短い期間であることを示す
②毎日の評価を記録に残す
3)当院における身体的拘束を行う場合の要件
(1)患者生命への危険・疾病の回復遅延や悪化が危惧される場合
(2)麻酔後半覚醒・術後せん妄
(3)脳血管障害による意識障害
(4)薬物中毒などによる意識障害
(5)認知症・せん妄等による意識障害
(6)その他(精神障害など)
4)当院における身体的拘束の具体的要件(下記のような懸念がある場合)
(1)点滴ルート・各種ドレーン類・気管内挿管・気管切開チューブ・尿道カテーテルの抜去等の自己抜去が予測される場合
(2)間接監視を行っているにも関わらずベッド・車椅子等からの転落が予測される場合
(3)創傷汚染が予測される場合
(4)自傷・他傷行為が予測される場合
(5)その他(医療者が生命の危険があると判断した場合)
5)当院の身体的拘束の種類
(1)四肢用抑制具
(2)ミトン型手袋
(3)体幹型拘束帯(ベッド用)
(4)体幹型拘束ベルト(座位用)
(5)Y字型拘束ベルト
(6)ベッド柵(4点柵以上の使用・固定をする)
(7)高柵ベッド・低床高柵ベッド等
6)身体的拘束としない具体的行為
(1)ベッド移動時の一時的な4点柵
(2)自力座位保持できない場合の車いすベルト
(3)患者の転倒や離院を防ぐ事故防止対策(離床センサーなど)
(4)検査や手術の薬剤による鎮静中での転落防止
(5)全身管理のために使用しているICU・HCUベッド
(6)整形外科治療で用いるシーネ等の固定
(7)点滴時のシーネ固定
7)向精神病薬等の適正使用
(1)非薬物的介入を家族や医療・介護スタッフと検討して実施する。そのうえでもなお症状が軽減しない際に薬物療法を考慮する。
(2)当院では「不眠・不穏」における院内推奨指示プロトコールを推奨している
(3)向精神薬の継続使用で症状が軽快していると判断できる場合は、減量・中止の重要性に常に留意し、必要に応じて検討する。
2.身体的拘束を行う場合の対応
1)身体的拘束の実施及び手順
(1)精神保健福祉法第36 条から考え,抑制の実施及び解除は,主治医の判断・指示に基づいて実施することを原則とする。
(2)緊急でやむを得ず身体拘束を行う場合は十分な観察を行うとともに開始記録を行う
(3)医師は患者及び家族に身体拘束の開始時間、身体拘束の必要性、身体的拘束束方法の妥当性、予定期間を説明し、同意を得て説明同意書にサインを得る
(4)看護師は,患者の状態から身体的拘束の必要性についてアセスメントし,行動の原因を推察し,原因除去に向けた身体的拘束代替の検討を行う。
(5)検討、実施を行っても効果がなく,看護師が身体的拘束の必要性を判断した場合は,医師に状態を報告する。医師不在時は,暫定的に実施し,事後報告を行う。
(6)医師は,患者の状態を診察後,身体的拘束の必要性を判断し,身体的拘束を行う場合は指示書に記載する。
(7)身体的拘束の時刻,患者の状態,代替方法を試みた結果,抑制の理由を診療記録に記録する。
(8)看護師が緊急を要する患者に暫定的に身体的拘束を行った場合も医師は、事後に説明を行う
(9)看護師は身体的拘束中の患者の状況を定期的に観察し、身体的拘束により生じる弊害の発生を防止する
(10)看護師は、身体的拘束の解除,軽減,回避に向けた取り組みを実施する。
2)身体的拘束解除及び手順
(1)主治医は,身体的拘束中の患者の診察を毎日行い,身体的拘束の適応を評価し,適応要件が改善した場合は,直ちに解除を指示する。
(2)看護師は身体的拘束中の患者を定期的に観察し,記録する。
(3)適応要件が改善した場合は他職種で検討し、直ちに解除する。身体的拘束解除時は,その時刻と患者の状態を診療記録に記録する。
(4)身体的拘束解除の基準:身体的拘束の対象と判断した具体的要件の消失の具体例
①点滴ルート・各種ドレーン類・気管内挿管・尿道カテーテルの抜去
②ベッド・車椅子等での生活が安全となった場合
③創傷汚染がなくなった場合
④自傷・他傷がみられなくなった場合
⑤その他危険が消失したと判断した場合
3)本人及び家族への説明と同意
(1)身体的拘束の説明は,原則主治医が実施する。主治医不在時は、代行医師が行う
(2)医師は,身体的拘束の理由・方法・時間・予定期間を患者本人・家族に説明を行い,理解と同意を得る。(但し,緊急及び夜間帯は看護師が代行して説明することも可能とするが、後日速やかに、医師より身体的拘束の必要性・方法の妥当性・具体的期間を家族に説明し、同意を得る)。同意を得た場合、署名した同意書原本として電子カルテに取り込みコピーを患者又は家族に渡す。
(3)身体行動制限(拘束・抑制)に関する説明同意書」を得る。
(4)緊急に身体的拘束の必要性が生じた場合は,事後に説明を行い,同意書を得る。
(5)予測できる場合は,事前にその可能性について説明しておく。
4)身体的拘束中の観察・評価・記録
(1)観察
①観察期間
原則として、身体拘束直後、15分後(抑制用具使用した場合)、その後は状況に応じて行う。少なくとも体位変換などを行う際や訪室する際には、観察を行う。
②観察事項
a.患者の精神状態(抑うつ、興奮、意欲の低下等)
b.体動状況
c.身体的拘束部位の皮膚の状態(色調・温度・感覚など)
d.バイタルサイン測定
(2)評価
患者の症状,状態,逸脱行為の内容,抑制をしない場合の予測される問題などを診療記録に明示する。身体的拘束中は、定期的に多職種でカンファレンスを行い、身体的拘束の継続・解除について検討し、記録する。身体的拘束部位や身体的拘束期間は最小限にとどめるよ、心身の観察・アセスメントを日々行う。必要に応じて、精神科等、専門医に相談する。
(3)記録
看護記録には, 身体的拘束(解除)の理由、内容(身体的拘束部位), 身体的拘束開始年月日・時刻, 身体的拘束解除年月日・時刻を記載し、期間中患者の観察に基づいたアセスメントを24時間ごとに行い、看護師2名のサインを記載する。
5)身体的拘束中の看護
(1)ナースコールを手元に設置する
(2)プライバシーの配慮を怠らない
(3)言葉や態度等で精神的苦痛を与えない(スピーチロックの禁止・無視しない・脅さない・恐怖を与えない・辱めない)
(4)5つの基本的ケア(起きる・食べる・排泄する・清潔にする・活動する)を整える
(5)患者の訴えを傾聴し、意思を尊重しながら希望にそってケアを行う
(6)抑制の種類に応じマッサージや清拭、手浴、足浴、四肢の自動、他動運動を行う
(7)向精神薬使用の際はドラックロックに留意し、適切に使用されているか観察し必要時評価をする。
3.その他
患者の行動を早期に把握しようとして間接的監視用具(センサー類)を用いた場合,看護師の対応によっては,患者の行動を制限し,患者が看護師の言動を不快に感じることも有りうる。その場合は,拘束とも受け取られるため,用具使用時は,患者・家族に必要性を十分説明する。看護師は,対応の仕方を考慮し,間接的監視用具を患者の自立支援の用具として活用する。
4.身体拘束最小化のための組織体制
1)設置
身体的拘束の最小化することを目的として、身体的拘束最小化チーム(以下、「チーム」という。)を設置する。なお、認知症ケアチームを兼務する。
2)開催
(1)チーム会は、月1回程度開催し、次のことを検討、協議する。
身体的拘束最小化に関する院内指針の作成・改定
(2)身体的拘束状況・身体拘束率の院内報告
(3)身体的拘束最小化に関する教育・研修企画・運営
3)構成員
チームは、脳神経外科部長をリーダー、認知症看護認定看護師、認知症リンクスタッフ会看護師長、さくら病棟副看護師長、薬剤師、社会福祉士、管理栄養士、作業療法士、心理療法士は兼任とする。そのほか、副看護部長、医療安全管理係長、医療安全副師長、専門職で構成する。なお、リーダーはチームの趣旨に照らして必要と認められる職員をチーム会に召集することができる
4)研修
身体拘束最小化のための職員教育(研修) 当院では、年間計画に沿って、すべての職員に対して、身体拘束最小化と人権を尊重 したケアの励行を図るために、以下の職員教育を行う。現任者には、定期的(年1回)に「身体拘束等最小化研修」を実施する。
令和年6年11月改定

